緑慎也の「ビル・ヘイビーっち覚えとって」

科学ライターですが、科学以外のことも書きます。

「AIと政治」はペーパーレスより大臣レス

 今週発売の「週刊新潮」(2018年5月17日号)で、コメントしました。記者さんから与えられたテーマは「AIと政治」。そんな大層な話できんよと思ったものの、詳しく聞くと、4月29日の小泉進次郎氏の発言、「ポリティクスとテクノロジーを合わせた造語ポリテックを合い言葉に、AIなどのテクノロジーを活用して、ペーパーレス化したり農業用水路を最適化したりしましょう」(要約)について感想を求められていたのです。それで僕は、「AIの活用で小泉氏が想定する応用例がショボイので、大げさにポリテックと名づけるほどではない」というような趣旨のコメントをしたわけです。

採用されたコメントには言葉足らずのところがあるので、以下、補足します。

2016年にインタビューした落合陽一氏は「人工知能に奪われる職は?」の問いに、次のように答えてくれました。

会社の中で一番要らない人間は社長。特に上場企業の社長は要らない。十分に大きな組織では、解決すべき問題の枠組みがあらかじめ決まっているからです。囲碁や将棋と同じで、範囲が限定された問題を扱うのは、人間よりコンピューターのほうが得意です。

SUNDAY LIBRARY:著者インタビュー 落合陽一 『これからの世界をつくる仲間たちへ』 - 毎日新聞

 インタビューは落合氏の著書『これからの世界をつくる仲間たちへ』(小学館)を「サンデー毎日」の書評欄で紹介する目的で行われたので、小学館、サン毎の編集者もその場にいましたが、「社長は要らない」の提言に、「十分に大きな組織」に属する彼らは大ウケ。

ところで、社長が真っ先にAI化されるべきなら、政治家、特に巨大な組織=官庁のトップである大臣クラスの政治家こそ真っ先に、AI化されるべきと言えます。

官僚が用意したペーパーどおりに国会答弁する大臣の姿が時々見られます。あれは本当に無駄。あんなことに時間と労力を費やすくらいなら、自動読み上げ装置を使ってくれと言いたくなります。わざわざ席を移動して、マイクの前に立つ必要はありません。

大臣たるもの、行政の細々な事情に通じて、自分の言葉で国会答弁すべきだと言いたいわけじゃありません。そんなことは無理です。というか人間には無理。だったらAIに。そうすれば人間は人間らしい忖度とか不正にもっと時間を費やすことができますね。

ところで自動音声読み上げ装置にオススメなのは、カナダのLyrebirdが開発したソフトウェアです。以下の音声を聞いてみて下さい。

ペーパーレスより大臣レス。ポリテックで大臣をAI化すべし、と小泉進次郎氏が訴えていたら、面白かったなあと思います。